潜水の種類
潜水の種類
レジャーのダイビングとちょっと違って、
業務の潜水には、いろいろな種類、方法の潜水があるんだ。
そして、今まで、法律で認められていなかった
空気以外の「混合ガス潜水」と「純酸素」の使用が認められたことから、
その種類も次のようなグループに分けられるんだ。
1 呼吸ガス(空気、混合ガス)によるもの
これは、呼吸するガスの種類でグループ化したもので、
「空気潜水」と「混合ガス潜水」に分けられ、
潜水深度が浅い場合には「空気」が、
深い場合には「混合ガス」が使用されるんだ。※1
空気潜水 | 圧縮空気 |
---|---|
ナイトロックス(窒素・酸素混合ガス) | |
混合ガス潜水 | ヘリオックス(ヘリウム・酸素混合ガス) |
トライミックス(ヘリウム・酸素・窒素混合ガス) |
※1
- ※ 空気もナイトロックスも、厳密には混合ガスですが、呼吸ガスの種類としては、空気潜水の仲間になります。
- ※ 混合ガス潜水では、混合ガスを作ったり、浮上時に混合ガスから空気や酸素への呼吸ガスを切り替えたりするため(ガス・スイッチ法)、専門知識や技術の人、設備などが整った状態で行われます。
空気潜水
- 通常の圧縮空気による潜水は、窒素酔いを防止するため、高圧則第15条によって、潜水深度は40mまでに制限されています。
ナイトロックス(窒素・酸素混合ガス)潜水
- 酸素濃度21%以上(酸素中毒にならない程度)の酸素と窒素濃度78%以下を組み合わせたもので、窒素の分圧が低いので、減圧するときに時間を短縮できるという利点があります。
- ヘリウムなどを使用した深い潜水を目的とするものではありません。
ヘリオックス(ヘリウム・酸素混合ガス)潜水
- ヘリウムと酸素を使用した混合ガスで、混合比は、潜水深度によって異なりますが、酸素中毒にならない酸素分圧160kPa以下(高圧則第15条第1号)となります。
- ヘリウムを用いた潜水では、窒素のように高圧下で麻酔作用を生じないため、深い潜水用に使用されます。
- 空気潜水では、高圧則で深度40m以上の潜水はできないため、混合ガスが使用されます。
- また、ヘリウムの密度が小さいので呼吸抵抗が少ないなどの利点もあります。
- 欠点としては、音声歪みが大きく、明瞭度が低下する(ドナルドダック・ボイス)こと、ガスの価格が高価なことなどがあります。
トライミックス(ヘリウム・酸素・窒素混合ガス)潜水
- ヘリオックスに窒素を加えた3種混合ガスで、混合比は、ヘリオックスと同じく、酸素中毒にならない酸素分圧160kPa以下、窒素の比率は、窒素酔いにならない窒素分圧400kPa以下(高圧則第15条第2号)となります。
- ヘリウムの割合が少ないため、音声歪みが小さくなり明瞭度が上がり、高価なヘリウムガスの価格も下がりますが、正確な混合精度が要求されるために製造コストは高くなります。
- 窒素が入るため、窒素酔いの防止から、ヘリオックスより潜水深度は浅くなります。
空気・ナイトロックス・・・・
ヘリオックス・トライミックス・・・
ぶつぶつぶつぶつ・・・・
2 潜水方式(潜水器、潜水設備)によるもの
※2
大気圧潜水
- 最近は装甲潜水器とも呼ばれる一人用の大気圧潜水服も実用化されています。
環境圧潜水(軟式潜水)
- 潜水者が潜水深度に応じた水圧(環境圧)を直接受けて潜水する方法で、通常の潜水の業務はすべて環境圧潜水です。
送気式潜水
- 空気圧縮機などによる圧縮空気を船上からホースを介して潜水者に送気する方法でホース式潜水とも呼ばれ、水中での呼吸ガスの確保の心配がなく、長時間の潜水が可能です。
- 潜水者の呼吸動作にかかわらず、常に一定量の呼吸ガスの送気し、複雑な機構を要しませんが、大量の送気を連続して行う必要があります。
- 代表的なものは、
ヘルメット式潜水器 金属製のヘルメットとゴム製の潜水服により構成されるもっとも古い潜水器です。
構造が簡単ですが、操作には熟練を要し、装備も重量で機動性も低いので近年は減少傾向にあります。
デマンド(応需)式潜水器
- 潜水者の呼吸に応じて送気が行われ、息を吸い込むと送気弁が開き、送気が行われ、息を吐くときは送気弁が閉まって排気されるため、送気は中断・断続的な送気となり、呼吸ガスの消費量は定量送気式(ヘルメット式潜水器)より少なくなります。
- 代表的なものは、
全面マスク式潜水(フルフェイス・マスク) 潜水器 | 顔面全体を覆うマスクとデマンド式(応需式)の潜水器を組み合わせた潜水器で、業務に多数使用されている。 簡易に脱着できる通常のものと、頭部全体を覆う、ヘルメットタイプやバンドマスクタイプなどがあります。 |
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フーカー式 潜水器 | 送気ホースの先端にデマンド・レギュレーター(応需式潜水器)を取り付けたもので、現在は、ほとんどが全面マスク式になっています。 全面マスク式を慣習的にフーカー式と呼ぶことがあるが正確ではありません。 |
スクーバ式潜水器(自給気式潜水器)
- 潜水者が携行するボンベからの給気を受けて潜水する方法で、スクーバとは、(Self-Contained Underwater Breathing Apparatus)セルフ・コンティインド・アンダーウォーター・ブリージング・アパラタス、自給式水中呼吸装置の頭文字をとったものです。
- 呼吸回路の相違から次のように区分されています。
開放式スクーバ | 潜水者の呼吸の排気が直接海中に放出される呼吸回路で、 通常の潜水の業務に用いられています。 |
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閉鎖循環式 (リブリーザー) | 呼気をそのまま水中に排気せず、薬剤で排気の炭酸ガスを吸収除去し、 酸素と窒素の混合ガス(ナイトロックス)などを添加して再利用する 循環式呼吸回路をもつ潜水器。 リブリーザーとも呼ばれ、「閉鎖回路型」と「半閉鎖型」があります。 |
なんかいっぱい種類がでてきたな。
そうだね、通常のダイビングは、スクーバ式潜水、
本格的な業務用には、ヘルメット式潜水、全面マスク式潜水、混合ガス・飽和潜水などが使用されるんだ。
送気式とは、常にホースで空気が潜水者に送られていて、
潜水者はホースからの呼吸ガスを吸う方式で、余った呼吸ガスは常に吐き出されているから、いつも、泡(呼吸ガス)がぶくぶくと出ているんだ。
デマンド式とは、地上の時と同じように潜水者の呼吸に合わせて、
呼吸ガスを吸い込み、そして、吐き出す方法で、
呼吸ガスの消費量も少なく、吐き出したときだけ泡がぶくぶくでるんだ。
最近は、「リブリーザ」といって、特殊な装置で吐き出した呼吸ガスを循環させ、
再利用し、吐き出した泡(呼吸ガス)がぶくぶくでない潜水器もあるんだよ。
3 減圧(空気、酸素)方法によるもの
減圧といって、浮上するときに身体にかかっていた圧力を、
徐々に地上の環境に適応した身体に戻す必要があるんだけど、
ゆっくりとした浮上や浮上の途中で一度浮上を停止することを
減圧というんだ。※3
この減圧は、何回も話していると思うけど、
高気圧障害などにならないために行うものなんだけど、
レジャーダイビングの世界でも、浮上の途中で停止してるよね。
はい。安全停止ですね。
※3
空気減圧
- 空気を呼吸しながら、徐々に浮上、減圧停止しながら体内に拡散・浸透した不活性ガスの排出を行うもので、通常はこの方法が取られます。
- 減圧時間を短縮できることから、不活性ガスの窒素の分圧が低い、ナイトロックスなどの呼吸ガスが使用されることもあります。
そうだよ。レジャーの世界では、高気圧障害になることは、
潜水の深さや潜水時間の関係から少ないけれども、
安全を考えて行われているんだ。
安全停止、これを「減圧停止・浮上停止」といって、
停止している時間を「減圧又は浮上停止時間」というんだ。
これは圧力によって、体内の組織や血液内に溶け込んだ不活性ガスを
安全に排出させるために行われるんだけど、
その時に使用する呼吸ガスの種類と方法により、グループに分けたものだよ。
減圧方法によるものとしては、
空気減圧 | 空気を呼吸しながらの減圧方法(通常) |
---|---|
酸素減圧 | 水中で行う酸素減圧 |
水上酸素減圧(再圧室減圧)。日本では緊急時以外は禁止されています。 |
今回の法改正で、酸素が使用できることになったのは、
前に少し話したけど、酸素は、身体の中に溜まった不活性ガスを
早く排出させるのに役立つので、酸素による方法が
取り入られるようになったんだね。※4
ただし、水上まで一気に浮上して、地上で減圧を行う方法(水上酸素減圧)は、
潜水者の水中での待機時間を短くするので、その分、潜水者への負担が軽くなる方法だけれど、
高気圧障害を伴う危険もあるので、日本ではまだ認められていなんだ。
さてと、水面での休息時間も十分にとったし、
体内の窒素残量も少なくなったので、
2回目の潜水の準備をしながら勉強しましょうか?
はい。
※4
酸素減圧
- 酸素減圧は、酸素を呼吸することによって、肺内の不活性ガス分圧を低下させることによって、分圧差を大きくし、体内に拡散・浸透した不活性ガスの排出を大幅に促進させ、減圧に要する時間を短縮することができます。
- 水中で行う酸素減圧と減圧室内で行う減圧方法があります。
水中酸素減圧(水中で行う酸素減圧)
- 今回の高圧則の改正において、浮上の際、減圧停止の深度から、呼吸ガスを酸素に切り替えて減圧を行う方法が認められました。
- しかし、酸素中毒のおそれもあるので、十分な注意が必要です。
- 酸素中毒を発症しても溺れることがないように、高圧則第15条第1号ただし書きで、溺水しないよう必要な措置を講じて浮上を行わせる場合には、220kPa以下とすると定められています。
- この措置とは、顔から外れない全面マスク式潜水器の着用、「潜水ベル」や「潜水ステージ」(水中で使用するエレベータのようなもの)を使用することや安全に呼吸ガスを切り替える(ガス・スイッチ法)を行ったりするため、専門知識や技術の人、設備などが整った状態で行われなければなりません。
再圧室減圧(水上酸素減圧)
- 現在、高圧則第18条第1項第2号及び平成26年厚生労働省告示第457号において、M値(人体の許容することのできる最大の不活性ガスの分圧のこと、後述参照)を超えないことと定められているので、日本では行うことができませんが、世界では「水上酸素減圧」が実施されているので、どのようなものか簡単に記載します。
- 深い潜水や長時間の潜水では、水中での減圧時間も長時間になることから、潜水者にも大きな負担がかかります。
- ですから、ある程度の水中減圧のあと、残りの水中減圧をやめて、浮上後、直ちに再圧室(減圧チャンバーとも言われる。)に移動して残りの減圧を再圧室内で行う方法です。
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