圧力
圧力
圧力って知ってる?
何かをぎゅっと閉じ込めるときに
必要な力みたいなものですよね。
それもそうなんだけど、潜水で大事なのは、身の回りにある空気(大気)と水の中に潜ると受ける水圧が大きく関係するんだ。
その他に、潜水で使う空気などを入れるボンベの圧力、
空気を常に潜水士に送り込む装置(コンプレッサーなど)の圧力、
ホースに送り込む送気の圧力など、
潜水にとって圧力はとても大事な事項だからしっかりと覚えてね。
圧力の表し方
まずは、圧力の単位からなんだけど、
「パスカル(Pa)」という言葉が使われます。
国際単位系(SI)の圧力の表し方(単位)なんだ。※1
※1
1気圧 1atm(アトム) | 1013.0hPa(ヘクトパスカル) |
---|---|
101.33kPa(キロパスカル) | |
0.1013MP(メガパスカル) | |
1.0133bar(バール) |
1気圧 | 101.33kPa(キロパスカル) |
---|---|
真水10mの水圧 | 98.067kPa(キロパスカル) |
海水10mの水圧 | 100.52kPa(キロパスカル) |
- 圧力とは、「ある面積あたりに垂直に働くちから(N:ニュートン)」のことで、1平方メートル(㎡)あたり1Nの力が加わるときの圧力を1Paといいます。
- 圧力は式で表すと、次のようになります。
力
圧力=ーーーーー
面積
パスカル?
なんか聞いたことがあるような・・・
普段誰でもよく耳にしてる言葉なんだけど・・・
天気予報でよく使われているよね。
台風のときなんか・・・・
ああ、ヘクトパスカル?
そうだよ。
潜水ではヘクトパスカルは使わないけど
kPa(キロパスカル)とMPa(メガパスカル)はよく使われるよ。
その他にも潜水では、
bar(バール)とかatm(アトム、大気圧)とかの言葉も出てくるからね。
ちなみにヘクトパスカルとパスカルの単位の関係は次のようになっているよ。
100,000Pa | 100kPa(キロパスカル) |
---|---|
0.1MPa(メガパスカル) | |
1000hPa(ヘクトパスカル) |
※ 100kPa=0.1MPa=約1atm=約1気圧=海水10メートルの水圧(100.52kPa)にほぼ等しいから、これを良く覚えておきましょう。
圧力の伝わり方
「パスカルの法則」
圧力の単位についてはわかったかな?
1気圧は、水深10mの圧力にほぼ等しくて、
パスカルの単位でいうと、
約100kPa又は約0.1MPaなんですね。
そうだよ。
次に圧力の伝わり方なんだけど、
伝わり方??
うーん、そうだね。
膨らんだ風船のどこかをぎゅっと押すと別の場所が膨らむよね。
それは、押した場所の圧力が別の場所に伝わったために膨らんだんだね。
潜水でとくに覚えてほしいのは、「パスカルの法則」といって、
「流体に加えられた圧力は、すべての方向に等しく伝わり、流体内の任意の面に対し、常に垂直方向に作用する。」
ということなんだ。※2
※2
- 水や空気などは、特に決まった形を持ってないので形は変わります。そのような物(物体)を流体(りゅうたい)といいます。
- 人の身体の内部はほどんど流体でできているので、圧力(水圧)が加わっても、身体に加わった水圧は、パスカルの法則によって、すべての細胞に瞬時に等しく伝わるため、細胞内部の圧力は常に水圧と均衡(均圧)を保つことができるので生体の組織構造に歪(ゆがみ)を生じません。つまり、普通の深さの潜水では人の身体は水圧に押しつぶされることはないのです。
??
難しいかな?
流体(りゅうたい)というのは、水や空気など、
形が決まってなくて、形が変化するもののことをいうんだ。
次の絵を見てもらえばわかるかな?
あらかじめ、針でさした小さな穴をあけた風船に水を入れると、
一方方向から入れた水があらかじめ空けておいた穴の全部(全方向)から
水がふき出すよね。
これが、「パスカルの法則」で、
流体に加えられた圧力は、すべての方向に等しく伝わったために、
圧力が加えられた方向や上下左右に関係なく圧力が伝わったということなんだ。
そっか!
水の圧力(「ゲージ圧力」)
圧力が伝わる方法を勉強したけど、次は、水の圧力について勉強するよ。
はい。
水の圧力には密度というものが関係するんだけど、
密度についてはまたあとで勉強するからね。
で、水の密度は、1g/cm3(1グラム/立法センチメートル)なんだ。
g/cm3ってのは、
1センチ×1センチ×1センチのサイコロの中に
詰まっている物の混雑状況の単位(密度)だね。
海水は塩分などが加わっているため、
密度は、1.025g/cm3
1m×1m×1mの海水の圧力は、10.052kPaで、
10mでは、100.52kPa。※3
この数字が1気圧にすごく近いというのは、さっきも少し勉強したね。
それで、海水10mあたり、約1気圧と覚えて、
そしてまた10m深く潜る(海水20m)と、
また、圧力が加わるので、201.04kPa、となるんだ。
つまり、海水10m深くなるに従って、
約0.1MPa(約100kPa 、1気圧)ずつ増加することも覚えておきましょうね。
それと水圧は水中の圧力だけのことだから、
それは、潜水で使用する器材などについている目盛り(ゲージ)などで表すので、
これを「ゲージ圧力」というんだ。※4
※3
- 水の質量は、体積1cm3で、1gです。
- 質量(g、グラム) = 密度(g/cm3) × 体積(cm3)
で、面積1mの高さ10mの水の質量は、=10,000kg
- 質量(g、グラム) = 密度(g/cm3) × 体積(cm3)
- 海水は普通の水とは違って塩分などが加わっているため、密度が高く、約1.025g/cm3なので、10mでは、10,250kg(質量)、
- 海水10メートルの水圧(100.52kPa)は、100,518.675Pa ≒ 100.52kPa
- 1atm(気圧)は、101.33kPa(キロパスカル)なので、10mの海水圧と近い数字なので、海水10mあたり、約1気圧と覚えます。
※4
- ゲージ圧力は、水圧のみを表していて、海水10mでは、100.52kPaとなり、20mではその2倍の、201.04kPa、 約2気圧が水の中だけでかかります。
- ゲージ圧力が使われる場合は、あとで出てくる「絶対圧力」と区別するために、Gという記号をつけて、201.04kPaGと区別する場合があります。
- 潜水業務において使用する圧力計や深度計には、通常「ゲージ圧力」が使われています。
うんうん。
海水10mごとに1気圧づつ、増えていくのね。
だったら30mだと3気圧ね。
そうだよ。ただし、水圧だけの場合だよ。
そうそう、空気にも圧力がありましたよね。
さすが、海野さん。
そうなんだ。
空気(大気)の圧力が加わることも大事だから
よく勉強しようね。
空気の圧力
空気にも水と同じように質量と密度があるので、
水圧と同じように圧力があるんだ。
いつも何も感じないけど?
あはは。
それはね、生まれたときから、
常に空気(大気)の圧力を身体に受けているので、
受けているという感じがしなくなっているだけなんだ。
ふーん。
どのくらいの圧力がかかっているの?
いい質問だね~。
さっき勉強したけど(笑)
えっ、??
あっ、1気圧(atm)か。
そうだよ。
海水面(地表面)では、101.33kPaだったよね。※5
これが、普段から身体に圧力としてかかっているんだ。
大気の圧力は、水銀というものを使ってイタリアのトリチェリという物理学者が見つけたんだ。
それで、水圧とは反対に高く上ると空気(大気)の圧力も少なくなっていくんだ。
これは、高いところにある湖で潜水する場合などに深く関係してくるから、覚えておいてね。
※5
- 空気の圧力は、水銀の密度と体積から質量を求め、空気(大気圧)は、海水面で101.33kPaとなります。これが1atm(気圧)です。
- 大気の密度は、海面から高くなるほど小さくなります。このあとの「ダルトンの法則」でも勉強します。
- このことは、山の湖など高いところでの潜水に関係があり、高いところではいろいろな計算等を修正して潜水しなければなりません。
- また、潜水直後の飛行機搭乗も気圧が低くなるから注意が必要です。
うんうん。10mで1気圧、
20mで2気圧ね。
あっ、それに空気の圧力でしたね。
そうそう。水圧だけじゃなくて、
さっき勉強した空気(大気)の圧力も加わってくるよ。
絶対圧力
さっき、水圧と空気の圧力について勉強したね。
今後は空気の圧力のことを「大気圧」というからね。
「大気圧」ね。
そう、水圧と大気圧が実際に潜水する際に
身体に圧力として影響を与えるんだよ。※6
水圧と大気圧を合わせたものを「絶対圧力」というよ。
※6
- 海水10mでは、海水圧の100.52kPaに、大気圧の101.33kPaが加わって、201.85kPa、(0.201MPa)、約2気圧、海水深20mでは、約300kPa(0.3MPa)3気圧、30mでは、約400kPa(0.4MPa)4気圧の圧力が加わってきます。
- この、「絶対圧力」と「ゲージ圧力」の違いによって、計算などでどちらを使うかで答えが大きく違ってくるので、試験問題などでも、どちらの答えを求めているのかをよく読みましょう。
そっか。
「大気圧」+「水圧」=「絶対圧力」
ということになるのね。
そうなんだ。だから、潜水では、
水深10mでは、大気圧1と水圧1で、2気圧絶対圧力が
身体にかかっているんだよ。
これが水深20mになると3気圧、
水深30mになると4気圧となるんだ。
絶対圧力は
「水圧」+「1気圧」と覚えればいいのね。
「ゲージ圧力」と「絶対圧力」
ゲージ圧力と絶対圧力を図にするとこんな感じになるよ。
逆に考えると、
「ゲージ圧力」は、「絶対圧力」ー「大気圧」(0.1MPa)
と考えることもできるね。
次は、気体の法則といって、少々やっかいな物理の勉強に入るよ。
でも、あまり難しく考えないで、法則などの基礎をしっかりと覚えてね。
むむむ・・・
さてと、頭の中がごちゃごちゃになる前に、
ここで今まで勉強したことを過去問題で実力テストしてみるよ。
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